AI音楽シリーズ『COSMOS The Lost Chronicles』より、今回は第8曲『Venus Flytrap』の制作記録をまとめます。
今回のテーマは金星。夜空でひときわ明るく、美の象徴として語られる天体ですが、その実態は灼熱、高圧、そして硫酸を含む過酷な大気に包まれた、極めて苛烈な星です。
本作ではそのギャップを、「美しいからこそ逃げられない」「愛のように見えて、ゆっくり破滅へ沈んでいく」という関係性に変換しました。楽曲、キャラクター、世界設定、MV演出まで一貫して、“美しき猛毒”としての金星を形にしています。

金星を「美しき猛毒」として描いた理由
金星は「明けの明星」「宵の明星」として知られ、遠くから見れば神秘的で美しい天体です。けれど、少し踏み込んで見ていくと、その内側にはまったく違う顔があります。
極端な高温、強烈な気圧、濃密な大気、そして触れればただでは済まない環境。つまり金星は、ただ美しいだけの星ではなく、近づいた者を圧倒し、ゆっくり飲み込む星でもあります。
『Venus Flytrap』というタイトルは、そうした二面性をそのまま象徴しています。Venusは美の女神であり、Flytrapは一度近づけば逃げにくい罠。遠目には魅力的でも、惹かれて一歩踏み込んだ瞬間から、相手はもう引き返せない――そんな構造をタイトルそのもので示しました。
この曲で描きたかったのは、暴力的な愛ではありません。むしろ、あまりにも美しく、あまりにも静かで、だからこそ抵抗できない吸引力です。押し潰されるほど重いのに、本人はそれを大げさに語らない。その静かな怖さが、今回の金星の核になりました。
クリーンな歌声で重圧を描く音作り
音楽面では、金星の「圧倒的な美しさ」と「逃げ場のない重圧」を同時に成立させることを重視しました。激しいシャウトや過剰な演技で押すのではなく、むしろ整った歌声のまま圧力を高めていく設計です。
- Style: Heavy dream pop, alternative rock, melancholic clean male vocal, smooth and resonant singing, massive slow heavy bass, delayed beautiful piano, wall of sound, quiet and loud dynamics, Japanese lyrics, BPM 72, Key: C# minor
- Exclude: whisper, scream, spoken word, synthesizer, acoustic guitar, brass
特に重要だったのは、きれいなクリーンボーカルを崩さないことです。金星の恐ろしさは、怒鳴ることでも叫ぶことでもなく、「美しいまま、逃がしてくれない」ことにあります。そのためボーカルはあくまで艶やかに、しかし後ろでは重低音ベースが地面ごと押し潰すように鳴り続ける構造にしました。
そこに深いディレイのかかったピアノを重ねることで、空間全体が湿り気を帯び、音が少しずつ沈んでいく感覚を強調しています。表面上は美しいドリームポップなのに、聴いているうちに呼吸が浅くなるような圧迫感が生まれる。そこがこの曲の狙いでした。
つまり『Venus Flytrap』は、派手に壊す曲ではなく、静かに、ゆっくり、確実に飲み込んでいく曲です。美しさと息苦しさが両立していることが、この作品のサウンド面での最大の特徴です。
キャラクター「Venus」と、落ちていく男
映像面では、金星そのものを擬人化した女性キャラクター「Venus」を中心に据えました。彼女は怒鳴りもしなければ、露骨に誘惑するわけでもありません。ただそこに存在しているだけで、周囲の空気や重力まで彼女の側へ傾いていくような人物として設計しています。
長く濡れた黒髪、液体のように流れる衣装、金色の雨粒や雫をまとったビジュアルは、単なる装飾ではありません。金星の過剰な大気、酸の雨、湿度、重圧、美しさそのものが体表に染み出しているようなデザインです。触れればやさしそうに見えるのに、実際にはそこに逃げ場がない。そんな矛盾を、視覚だけで伝えることを目指しました。


対になる存在として配置したのが、“The Fallen Man”です。彼は金星に抗う英雄ではなく、美しさに惹かれ、分かっていながら沈んでいく側の人間です。
この構図にすることで、物語は単なる恋愛表現ではなくなります。彼は彼女を征服しようとするのではなく、近づき、圧され、濡れ、侵食され、やがて自分の輪郭を保てなくなっていく。『Venus Flytrap』は、恋に落ちる話というより、美しさに身を委ねた結果として沈んでいく話です。
Venus City、Cloud Sea、Acid Rain、Pressure Spaceで作った世界観
今回のMVで特徴的なのは、キャラクターだけではなく、世界そのものが感情を持っているように設計されていることです。金星の環境を、そのまま物語の舞台に落とし込んでいます。
まずVenus Cityは、重い空気と酸の雨が支配する都市空間です。美しい尖塔や建築は並んでいても、空気は湿り、街は鈍く腐食し、輝きと死の気配が同時に漂います。見た目には壮麗なのに、住みたいとは思えない。まさに金星らしい矛盾を担う背景です。
Cloud Seaは、地面の代わりに雲が広がる世界として構築しました。足場がありそうで、実際には沈んでいくしかないこの場所は、「安心できそうで安心できない愛」の比喩として非常に機能します。
さらにAcid Rainでは、金星を象徴する酸性の雨を前面に出し、侵食と美しさを同時に描きました。雫は単なる雨ではなく、触れたものの輪郭を少しずつ曖昧にしていく存在です。そしてPressure Spaceは、今回の世界観のコアとなる空間です。空気が重く、呼吸そのものが負荷になるような閉鎖空間として描くことで、逃げ場のなさを視覚化しました。



33カットで描いた「美しく、ゆっくり沈む」MV構成
MVは33カット構成で設計し、導入から終盤まで一貫して「ゆっくり沈む」感覚を途切れさせないようにしています。序盤ではVenusの静かな存在感と、重圧に満ちた空間を見せながら、男性側がその世界へ自ら入っていく流れを作りました。
中盤では都市、雲海、酸の雨、圧力空間を横断しながら、彼の呼吸や輪郭が少しずつ奪われていきます。ここで重要なのは、一気に壊れるのではなく、「まだ戻れそうなのに、もう戻れない」という距離感を保つことでした。
サビ以降は、Venusが何かを能動的に壊すというより、世界そのものが彼を飲み込んでいきます。雨、湿度、重力、気圧、そのすべてが恋愛感情の比喩として働き、最後には“愛されている”のか“消されている”のか分からないまま、彼は深く沈んでいきます。
そのためこのMVの見どころは、ドラマチックな出来事の量ではなく、雰囲気の積み重ねにあります。ロゴ、雨粒、雫、濡れた髪、にじむ光、重い空気。そうした細部を積み重ねることで、『Venus Flytrap』という作品全体をひとつの圧力場として成立させました。

▼『Venus Flytrap』の映像・楽曲はこちら
まとめ:美しさに近づいた瞬間から、もう沈み始めている
『Venus Flytrap』は、金星の美しさをただ神秘的に描いた作品ではありません。むしろ、美しいからこそ危険であるという、金星の本質的な怖さを掘り下げた作品です。
クリーンな男性ボーカル、重く沈むベース、湿度の高いピアノ、酸の雨が降り続ける世界、そして静かに人を沈めていくVenus。これらをひとつにつなげることで、「愛のように見えて、実は抜け出せない圧力だった」というテーマを、音と映像の両面から表現しました。
遠くから見れば、美しい。けれど触れた瞬間、もう逃げられない。そんな金星の魅力と恐ろしさを閉じ込めたのが、この『Venus Flytrap』です。公開した際は、ぜひ映像とあわせて、その重さごと体感してみてください。
COSMOSを続けて読む
前の制作記録:蠍座 / The Silent Guardian

次の制作記録:土星 / Falling Through Saturn




コメント