AI音楽でキャラクターはどう育つ?「怠惰」を3回作り直したBelfの制作記録

自動化された部屋でくつろぐ怠惰のキャラクターBelf AI音楽

「怠惰」という同じテーマを、私は一度で使い切りませんでした。

最初は、聴いた人を何もしたくなくさせる音。
次は、サボるためなら異常なほど努力する人物。
さらにその後は、誰かとの過去を持ち、日々の面倒を仕組みで消しながら暮らす人物へ。

同じ言葉でも、作品を作るたびに見る角度を変えると、テーマそのものの意味まで変わっていきます。

この記事では、Sunoを使い始めた頃に作った原罪シリーズの「怠惰」が、V1、V2、V2.5を通して
感覚 → キャラクター → 関係と時間を持つ人物
へ変わっていった過程を振り返ります。

その中心にいるのが、怠惰を担当するキャラクター Belf(ベルフ) です。

原罪シリーズは、Sunoを始めて最初に作ったシリーズだった

Sunoを使い始めた頃、単発で曲を作るだけではなく、「何かシリーズものを作りたい」と考えていました。

そこで選んだのが、七つの大罪です。

もともと七つの大罪という題材が好きだったことに加えて、以前YouTubeで見た原罪をテーマにしたボカロ作品が印象に残っていたこともありました。

傲慢、嫉妬、憤怒、大食、強欲、色欲、怠惰。

同じ「罪」という括りでも、それぞれ音楽にしたときの景色が違います。
曲ごとにジャンルや表現を変えながら、一つのシリーズとして遊べるのではないか。

そう考えて作った最初の7曲が、今振り返って V1 と呼んでいる原罪シリーズです。

V1は基本的に楽曲中心でした。色欲だけは短い動画を作った記憶がありますが、現在のようなフルMVのシリーズではありません。

V1の原罪シリーズは、今もSunoに残っています。


原罪シリーズ V1をSunoでまとめて聴く

V1の怠惰――「怠惰を描く」より、聴いた人を怠惰にする

V1の怠惰は、

『Midnight Sloth ~絡みつくシロップ~』


Sunoで『Midnight Sloth ~絡みつくシロップ~』を聴く

最初から現在の形だったわけではありません。

当初はDoomgazeやSlowcoreのような重いサウンドで、
「動きたいのに動けない」「身体が鉛のように重い」といった、
怠惰そのものを音で表現しようとしていました。

ところが制作途中で、少し考え方が変わります。

「怠惰を表現するのではなく、聴き手を怠惰にさせる曲にした方が面白い」

そう思ったのです。

そこから方向を大きく変えました。

Lo-Fi、Chill、Dark Ambient、深いベース、雨音、同じフレーズの反復。

さらに、歌詞もほとんど必要ないと考えるようになりました。

聞き取れない程度の囁きを、歌として前に出すのではなく、音響の一部として埋める。

「シズメ」「オヤスミ」といった短い言葉だけが遠くに残るような構成です。

V1の怠惰は、まだ人物ではありません。

聴いた人をゆっくり沈ませる、甘くて粘る“沼”そのものでした。

雨の夜、シロップのように室内がゆっくり溶けていくMidnight Slothのイメージ

Xの企画をきっかけに、原罪シリーズをもう一度作る

その後、Xでアルパカ紳士さんの原罪企画を偶然知りました。

最初は、すでに作っていた色欲の曲を投稿しています。

そこで主催者から「おかわりもOK」と言っていただき、

「だったら全部やってしまおう」

となりました。

そこから短期間で七つの大罪をもう一度作り、さらに番外として第8の罪「虚栄」を追加。
今度は曲だけではなく、それぞれにMVも付けました。

これが V2の7+1曲です。

ただし、かなりの突貫制作でした。

時間をかけて高度な音楽理論を組み立てたわけではありません。

「前の曲と似るのは嫌だ」
「今回は何と何を混ぜたら面白いだろう」
「変だけど、とりあえずやってみよう」

そんな判断を繰り返しながら作っています。

その中で、怠惰もV1とはまったく別の方向へ進みました。

V2の怠惰――サボる天才は、サボるためなら努力する

V2の怠惰は、

『THE KING OF LAZY ~絶対的サボタージュ~』

です。

ここで初めて、Belfという人物が生まれました。

Belfの核になったのは、

「究極のサボりのための労力は、いとわない」

という考え方です。

何もしない人ではありません。

今日5分の作業をしなくて済むなら、昨日5時間かけて自動化する。

立ち上がりたくないから、自分の周囲だけ異常なほど便利にする。

努力する能力はあるのに、その努力を「働かなくて済む未来」のために使う。

動かない未来を買うために、いま動く。

そのねじれから生まれたのがBelfです。

なぜロカビリー×レゲエだったのか

V2では、Rockabilly × Reggaeという組み合わせにしました。

今振り返っても、ここに大げさな理屈はありません。

怠惰なら、レゲエの脱力した雰囲気は合いそうです。

でも、それだけでは少し普通でした。

当時の原罪シリーズでは、異なるジャンルをぶつけること自体を楽しんでいたので、
「では、レゲエに何を合わせたら変になるだろう」
と考えて選んだのがRockabillyです。

計算というより、かなり勢いでした。

ところが完成してみると、この組み合わせが妙にBelfと噛み合いました。

忙しく跳ねるRockabilly。
そこから力の抜けたReggaeへ落ちていく。

サボるための仕組みを作っている時間だけ妙に働き、完成した途端に何もしなくなる。

結果として、曲そのものがBelfの一日のようになりました。

THE KING OF LAZY――「怠惰な気分」から「怠惰な人物」へ

V2で大きく変わったのは、怠惰の扱い方です。

V1では「何もしたくなくなる感覚」そのものを作っていました。

V2では、

「この人物なら、怠惰だからこそ何をするのか」

を考えるようになりました。

Belfの部屋もその延長です。

本人が動かなくて済むように、自動化装置や家電、制御機器が働いている。

周囲は忙しいのに、本人だけがほとんど動きません。

完成したV2のMVはこちらです。

Sunoでも聴けます。

Sunoで『THE KING OF LAZY』を聴く

V2「Absolutely Bonkers!」8曲をSunoでまとめて聴く

この時点で、怠惰は「曲の雰囲気」ではなく、Belfという人物の行動原理になっていました。

曲のために作った設定が、Belfという人物になっていった

V2の時点では、Belfはまだ曲やMVを成立させるためのキャラクターに近い存在でした。

名前がある。
見た目がある。
性格がある。
「サボるために努力する」というルールもある。

それでも、曲の外で彼が何をしているのかまでは、まだあまり考えていませんでした。

ただ、ここで一つ大きな変化が起きています。

抽象的な「怠惰」という言葉を、

「この人物ならどう選択するか」

に置き換えられるようになったことです。

人物として考えられるようになると、その先を作れるようになります。

V2.5――キャラクターを必ず誰かと関わらせる

その次に作り始めたのが、私が V2.5 と呼んでいるシリーズです。

V2.5では一つルールを決めました。

キャラクターを必ず誰かと関わらせる。

単純な「その後の物語」ではありません。

誰と会ったのか。
何を話したのか。
その出来事をどう覚えているのか。
相手側には、その出来事がどう残っているのか。

一人で完結していたキャラクターを、他者との関係の中へ置くようになりました。

BelfとLevi――同じ出来事を、別の曲にも残す

BelfがV2.5で関わる相手は、嫉妬を担当する Levi(レヴィ) です。

二人には、以前一緒に家電を見に行った出来事があります。

それ自体は大事件ではありません。

家電について少し話した。

それくらいの出来事です。

でも、その何でもない出来事を、二人の側に残しました。

Belf側の曲にも痕跡がある。
Levi側のV2.5曲にも、Belfと家電を見に行ったことを匂わせる要素がある。

同じ出来事が、別々の人物の曲に、別の角度から残っています。

片方の曲を知ると、もう片方の何気ない一行の意味が少し変わる。

この頃から、原罪キャラクターは「八つの独立した設定」ではなく、
同じ時間の中で互いに影響し合う人物たち
になり始めました。

Manual Override――一度だけなら動いてもいい

BelfのV2.5曲が、

『Manual Override』

です。

今回はフルMVではなく、ショート動画として制作しました。

物語はとても小さな出来事から始まります。

自動調理家電が料理を完成させる。

材料を入れ、調理も自動。

しかし最後に一つだけ問題が残ります。

完成した料理を取り出すところだけ、人間がやらなければならない。

Belfはそこで、

「……ここまで来て手動か」

と考えます。

そして立ち上がる。

ただし、料理を取り出すためだけではありません。

一度だけなら動いてもいい
二度目がないようにするために

さらに、

立つより先に設定を開く
残った一秒を書き換える

次回から同じ手間が発生しないよう、先に仕組みを書き換えようとします。

V2の「サボるために努力する」が、ここではもう少し生活に馴染んでいます。

大げさな発明ではありません。

毎日の小さな面倒を見つけて、

同じ無駄を二度繰り返さない。

怠惰が、ギャグではなくBelfの生活哲学になりました。

自動調理家電の設定を見直すBelfと、記憶として残るLeviのイメージ

Sunoで『Manual Override』を聴く

でも、人間関係だけは自動処理できない

『Manual Override』には、もう一つ別の要素があります。

Leviとの記憶です。

歌詞には、

デリートした ミュートもした
スリープにして 画面を閉じた
それでもあの日の短い声が
バックグラウンドでまだ動く

という部分があります。

生活の面倒なら仕組みで消せます。

機械なら設定を書き換えられます。

一度面倒だったことを、次から発生しないようにすることもできます。

でも、誰かと過ごした短い記憶までは、同じようには消せません。

曲の最後は、

「……次は 取り出すところから」

で終わります。

家電の設定を更新する話と、消せない短い声。

この二つが同じ曲の中に並んだことで、Belfは「怠惰を象徴する人物」から、
他者との過去を持って現在を暮らす人物
へ少し変わりました。

サウンドもV2とは変えています。

J-Popを軸に、City PopやNeo-Soulの影響を加え、
制作時には Lazy Alternative Pop × Lo-fi Electro Funk と整理しました。

V2のような大きなジャンルの落差より、生活の中で低く動き続けるグルーヴへ寄せています。

関係を持たせると、時間軸の管理が必要になった

Belfの中には、Leviとの記憶があります。

Leviの側にも、Belfとの出来事が残っています。

すると次の曲を作るとき、

「この二人は以前どこまで関わっていたのか」
「この出来事はいつ起きたのか」
「現在の距離感はどうなっているのか」

を覚えておかなければなりません。

プロフィール表だけでは足りなくなりました。

そこで、キャラクター同士の関係、共有した出来事、時間軸、現在の状態を管理するために、
プロンプトジェネレータや設定管理を作り始めました。

最初から大きなキャラクター管理システムを作ろうと思っていたわけではありません。

続きを作ったときに、以前の出来事と矛盾させたくなかった。

始まりはそれだけです。

その延長線上にSCENAがある

現在続けている SCENA は、その先にあります。

GPTやGrokBotを使いながら、キャラクターの「時間のコマ」を少しずつ進めています。

曲を作る瞬間だけ存在する設定ではなく、

前回から今回までの間にも時間が流れている。

誰かと会う。
距離が変わる。
何かを引きずる。
あるいは、特に何も起きない。

そうした時間まで含めてキャラクターを扱えないか、今も試しています。

原罪シリーズは、最初はSunoを使い始めた私が、
「何かシリーズものを作りたい」
と思ったところから始まりました。

それが、
音楽 → 映像 → キャラクター → 関係 → 時間
へと広がっていきました。

3回作って分かった。「テーマ」は一曲で使い切らなくていい

同じ「怠惰」を三回作り直すと、中心はこう変わりました。

段階 怠惰の中心
V1 聴く人を沈ませる「感覚/沼」
V2 サボるために努力する「行動原理」
V2.5 無駄を繰り返さない「生活哲学」+他者との記憶

ここから分かったことがあります。

同じテーマを使うことと、同じ作品を繰り返すことは別です。

V1では「怠惰をどう感じさせるか」を考えました。

V2では「怠惰な人物なら、どう行動するか」を考えました。

V2.5では「その人物が誰かと関わり、時間を過ごしたらどう変わるか」を考えました。

テーマそのものを変えなくても、テーマを見る距離を変えることで、別の作品にできます。

そして、使える表現手段が増えると、テーマの解釈自体も変わります。

音だけだったときは感覚だったものが、キャラクターとMVを持つと行動原理になり、
他者との関係と時間を持つと、一人の人物として動き始めます。

AIが作品らしいものを一度で出してくれる時代だからこそ、私はむしろ、

一度で完成させなくてもいい。

何を残すか。
何を捨てるか。
どの偶然を採用するか。
前に作ったものを、次にどうつなげるか。

その選択の積み重ねが、AIで作った作品にも固有の時間を与えていくのだと思います。

ORIGINAL SIN / INTERACTIVE

あなたの中で「怠惰」はどれくらい混ざっている?

Belfの「怠惰」は、ただ何もしないことではありません。
動かなくて済むように、仕組みそのものを整えていく怠惰でした。

では、あなた自身が何かを選ぶとき、心ではどの罪が強く動き、
行動を整えたあとには、どの罪が混ざっているでしょうか。

12の選択から、傲慢・嫉妬・憤怒・大食・強欲・色欲・怠惰・虚栄の8つを、
「心の配合」と「行動の配合」に分けて読み解きます。

罪の配合診断をやってみる →

まとめ――怠惰を作っていたはずが、一人の生活を考えていた

『Midnight Sloth』では、怠惰は聴き手を沈ませる甘い沼でした。

『THE KING OF LAZY』では、サボるために異常な努力をするBelfになりました。

『Manual Override』では、そのBelfが日常の小さな無駄を消しながら、
それでも消えない他者との記憶を抱えて暮らしています。

最初から、ここまで考えていたわけではありません。

続きを作ったから、以前の設定に新しい意味が生まれました。

Belf本人なら、そんな大げさな話をされても、たぶん面倒そうな顔をすると思います。

そして次も、

「面倒くさい」

と言いながら、同じ面倒を二度とやらなくて済む方法を考える。

仕組みを作り終えたら、また何もしなくなる。

今のBelfには、それくらいがちょうどいい気がしています。

原罪シリーズを続けて読む

Belf以外の原罪も、同じ「罪」という題材からまったく違う人物と音楽を作っています。

前後の作品を読むと、「原罪」という同じ大枠を、それぞれどの角度からキャラクターへ変換したのかも比較できます。

前の原罪:色欲 / Carmilla

AI音楽で「色欲」を3回作ったら、Carmillaは誘惑より予想外を欲しがった|制作記録
AI音楽で「色欲」を3回作った制作記録。V1の狂喜の舞踏から、声でCarmillaが生まれたTOKYO LUST、誘惑の予定調和に退屈し始めるV2.5 NEON ENNUIまで振り返ります。

次の原罪:憤怒 / Zion

AI音楽で「憤怒」を3回作ったら、怒りで続きを書かないZionになった
AI音楽で「怒り」をどう表現するか。憤怒を3回作り直し、溜めて爆発するV1、神への反逆を背負ったZionのV2、疑念があっても証拠なしでは裁かないV2.5へ変化した制作過程を振り返ります。


AI音楽・AI MV制作の記事一覧を見る

AI音楽など「音」のコンテンツが好きな方には、Amazonの聴く読書「Audible(オーディオブック)」もおすすめです。 小説からビジネス書まで、プロのナレーターの朗読で楽しめるので、通勤中や作業中のBGM代わりインプットに最適ですよ。 初めての方は無料体験ができるので、ぜひ一度「耳で聴く新しい読書」を試してみてくださいね!【PR】
AI音楽
シェアする
shinをフォローする
この記事を書いた人
shin

業務改善・DX支援コンサルタント / Webコンテンツクリエイター。
営業・店舗マネジメントから現場作業まで25年以上の実務経験を持ち、現在はフリーランスとして企業のDX推進(kintone導入やバックオフィス効率化)を支援。

プライベートでは、自身の子供の中学受験・基礎学力向上のために作成した教育系動画をきっかけに、AI技術を用いた音楽や動画制作の探求を開始。

当サイトでは複雑な業務や知識を、誰でも使えるシンプルな仕組みに落とし込むコンサルタントの知見を活かし、最新AIツールから教育、歴史的占術まで、実践的でわかりやすい一次情報を発信している。

なお、X(旧Twitter)等では「Beta」として、AI音楽やイラスト制作の実践記録も公開中。

shinをフォローする

コメント

タイトルとURLをコピーしました