強欲という言葉から最初に思い浮かべたのは、単純でした。
もっと欲しい。全部欲しい。手に入れても、まだ足りない。
最初のV1は、ほとんどそのままです。
ところが同じ強欲を作り直していくうちに、欲しいものが変わっていきました。
物だけでは足りなくなり、他人そのものを欲しがる。次には、欲しい相手をすぐ変えず、その人がどこから来たのかを知りたくなる。そしてV3では、大切な相手を失いたくないから、同じ相手をもうひとつ欲しがる。
Monetは欲望を克服したのではなく、欲しがり方の解像度だけが上がっていきました。
この記事では、AI音楽で強欲を4回作るうちに、単純な所有欲から、人間そのもの、相手を知る時間、そして複製したいほどの執着へ変わっていったMonetの制作記録を振り返ります。
V1――全部欲しい。でも、まだ足りない

最初の原罪シリーズで作った強欲は、『Greed’s Merry-go-round』です。
Sunoで『Greed’s Merry-go-round』を聴く
この頃の強欲はかなり分かりやすいものでした。
Electro SwingとBig Band Jazzの賑やかさに乗せて、もっと欲しい、全部欲しい、手に入れても満たされないという欲望をそのまま回し続けています。
タイトルのMerry-go-roundも、その止まらなさから来ています。
金、物、成功、世界そのもの。何かひとつを欲しがるというより、手に入れられるものは全部欲しい。
V1の強欲は、量が増えても満腹にならない欲望でした。
V1の原罪シリーズ全体はこちらです。
V2――物ではなく、人そのものが欲しくなった

V2で強欲は大きく変わります。
ここで生まれたのが、後にMonetと名付けるキャラクターです。
V2の曲は『Velvet Toy Box』。
V1では世界中の物を欲しがっていましたが、V2ではそれだけでは足りなくなりました。
Monetが欲しがるのは、他人です。
しかも、そばにいてほしいという程度ではありません。
相手そのものが欲しい。ついには、その人に成り代わるところまで行く。
かなり危うい人物です。
Monetのモデルは、当時5歳の娘だった
Monetのキャラクターを作るとき、見た目や無邪気な雰囲気の出発点にしたのは、当時5歳だった私の娘です。
もちろん、他人に成り代わるような狂気まで娘をモデルにしたわけではありません。そこは完全に作品として後から作った設定です。
むしろ、幼い子どものような無邪気さや、欲しいものを素直に欲しいと言える雰囲気に、強欲という原罪を極端なところまで重ねた結果、見た目の可愛さと中身の危うさが大きくずれたキャラクターになりました。
名前のMonetも、この時点で最初から決まっていたわけではなく、後から付いたものです。
V2のMVはこちらです。
自分以外の人にも気に入ってもらえたキャラクター
V2のMonetには、もうひとつ印象に残っていることがあります。
この曲を気に入ってくださった方がいて、カバーまで作ってもらいました。
自分の中だけで作っていたキャラクターや曲が、他の人の表現へ渡っていくのは、かなりうれしい出来事でした。
原罪シリーズの中でも、Monetにはそういう意味で別方向の思い入れがあります。
V2.5――欲しいのに、鋏を閉じた

V2.5で作った曲が、『The Thread Is Still Unclaimed』です。
185 BPMのJ-Popを軸に、Math RockやPower Popを混ぜた速い曲です。複雑なギターとベース、細かく動くドラムの上で、Monetの感情も忙しく動きます。
でも、物語の中でMonetは珍しく止まります。
鋏は閉じたまま木箱の影で眠ってる
いつもの私なら迷わず形を変えたのに
以前のMonetなら、自分が欲しいと思ったものを、自分の好む形へ変えていたはずです。
ところが今回は、すぐには触りません。
どこから来たの
誰を通ったの
答えを消すには綺麗すぎるから
欲しくなくなったわけではありません。
むしろ逆です。
欲しいからこそ、その相手が何者なのかを知る前に変えたくなくなった。
人形という設定には、制作上の理由がある
Monetは制作上の都合から、人形という設定になっています。
そのため、この曲に登場する相手も人形として描いています。
ただ、物語上の意味は単なる人形集めではありません。
もしMonetを人間として設定していたなら、ここで彼女が見ている相手も人間です。
他人そのものを欲しがり、相手に成り代わるところまで行くMonetが、初めて相手の由来を知るまで手を止めた。
そこがV2.5の変化です。
Sunoで『The Thread Is Still Unclaimed』を聴く
止まったのに、強欲は弱くなっていない
V2.5だけを見ると、Monetが少しまともになったようにも見えます。
でも歌詞を読むと、そう単純ではありません。
残した距離もわたしにちょうだい
切らないまま ほどかないまま
知らないあなたを覚えていたい
相手を変えない。
距離も残す。
でも、その距離まで欲しがっています。
糸はまだ 誰のものでもない
その「まだ」さえ宝物になる
Monetは所有を諦めたのではなく、待つ時間まで所有したくなった。
強欲が弱くなったのではありません。欲望の対象が増えています。
そしてV3――あなたをもうひとつ

Monetだけは、さらにその先まで作りました。
V3の曲が、『あなたをもうひとつ』です。
Carpathian Folkを軸に、Music Box、Handbells、Cimbalom、Violin、Accordionなどを使い、可愛らしさと不穏さを同時に強めました。
V2.5では、相手をすぐに自分の形へ変えず、由来を知るまで待つことができました。
少し落ち着いたように見えます。
ところがV3では、また別方向へ行きます。
あなたをもうひとつ
同じあなた ここへ置いて
ひとつじゃ足りない
手に入れたからまだ足りない
もう相手を奪って自分になる必要はありません。
今度は、その相手をそのまま増やそうとします。
ひとりじゃなくて ひとつ
だって大事なものは
なくさないように増やすでしょう
ここがMonetのかなり怖いところです。
本人の中では、かなり筋が通っています。
大切なものは失いたくない。なら増やせばいい。
ひとつ手に入れれば満足するはずなのに、ふたつになると三つ目を置く場所が見えてくる。
ふたつになれば
三つ目の場所が見えてくる
空いてなかったはずなのに
ほら ちゃんと空いてる
欲望を満たした結果、空白が消えるのではなく、新しい空白が見えるようになる。
V3のMVはこちらです。
4回作って分かった――Monetは成長したのではなく、欲望が複雑になった
Monetの強欲は、4世代でこう変わりました。
| 段階 | 強欲の中心 |
|---|---|
| V1 | 世界中の物を全部欲しがる |
| V2 | 物では足りず、他人そのものを欲しがる |
| V2.5 | 相手の由来、違い、距離、待つ時間まで欲しがる |
| V3 | 大切な相手を失わないため、同じ相手を増やそうとする |
普通なら、キャラクターの成長は欠点を克服する方向へ進みます。
強欲なら、欲しがらなくなる。誰かを尊重するようになる。満足することを覚える。
Monetは、そうなりませんでした。
V2.5では相手を尊重するようになった部分があります。でも、その尊重まで欲望の中へ取り込んでしまいます。
V3では、大切にするという感情まで複製欲へ変換します。
Monetが学ぶほど、強欲も一緒に学んでいる。
だから、少し人間らしくなっているのに、同時に前より厄介になっています。
ORIGINAL SIN / INTERACTIVE
あなたの中で「強欲」はどれくらい混ざっている?
Monetの「強欲」は、物をたくさん欲しがるだけではありません。
違いも、距離も、待つ時間も、そして相手そのものまで「自分のものにしたい」と願う欲望です。
では、あなた自身が何かを選ぶとき、心ではどの罪が強く動き、
行動を整えたあとには、どの罪が混ざっているでしょうか。
12の選択から、傲慢・嫉妬・憤怒・大食・強欲・色欲・怠惰・虚栄の8つを、
「心の配合」と「行動の配合」に分けて読み解きます。
まとめ――足りないものが増えていく
V1では、全部欲しいという単純な強欲でした。
V2では、物ではなく人そのものまで欲しがるMonetが生まれました。
V2.5では、欲しい相手をすぐ変えず、その人が何者なのかを知るまで待てるようになりました。
そしてV3では、大切だからこそ、同じ相手をもうひとつ欲しがります。
最初よりずっと他人を見ています。
最初よりずっと相手の違いも大切にしています。
それなのに、強欲は消えていません。
欲望の方が、Monetと一緒に成長してしまった。
今のMonetを一番短く説明するなら、それが近い気がします。
原罪シリーズを続けて読む
前の原罪:傲慢 / Rex

V2.5でMonetと関わる人物:憤怒 / Zion

次の原罪:嫉妬 / Levi




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