傲慢というテーマは、最初からキャラクターとして考えていたわけではありません。
V1では、完璧な理論で神の領域へ挑み、最後には自分の築いたものに押し潰される天才を作りました。V2では、ルイ14世をイメージした絶対王者と、パガニーニのような超絶技巧をベースで表現することに力を入れました。そしてV2.5では、その絶対的な王の領域に、初めてひとつの例外が残ります。
面白いのは、Rexが他人を受け入れたからといって謙虚になったわけではないことです。
例外を許すことさえ、自分の決定として秩序の中へ組み込む。
この記事では、AI音楽で傲慢を3回作り直すうちに、崩壊する天才から絶対王者へ、さらに他者の存在すら自分の様式へ変えるRexへと変化していった過程を振り返ります。
V1――完璧すぎる人間は、最後に崩れる
最初の原罪シリーズで作った傲慢は、『数理と神話~Babel’s Pride~』です。
この頃は、まだRexという人物はいませんでした。
先にあったのは、Math Rock、Progressive Rock、Classicalを組み合わせた、緻密で壮大な音楽を作りたいという発想です。
複雑な拍子、計算されたリズム、クラシックの荘厳さ。そこから連想したのが傲慢でした。
完璧な理論を積み上げれば、神の領域に届くと思っている人間。
一つひとつの石を寸分違わず積み上げ、誰よりも高い場所へ行く。しかし最後には、その完璧だと思っていた塔そのものが崩れていく。
V1の傲慢は、完璧さを信じすぎた天才の物語でした。
歌詞でも、地上の人々を見下ろし、自分が宇宙の法則を書き換えるとまで言い切った人物が、最後には崩壊する塔の中で自分の間違いに気づきます。
今見るとかなり直球です。
傲慢だから高い場所へ行く。神へ挑む。最後は罰を受けて崩れる。
でも、この分かりやすさがV1でした。

V2――キャラクターより先に、絶対王者の音を作りたかった
V2では、傲慢の考え方が大きく変わりました。
完成した曲は、『L’État, c’est moi ~絶対王政と悪魔の技巧~』です。
この曲では、キャラクター設定よりも先に、音楽としてやりたいことがかなりはっきりしていました。
モデルにしたイメージはルイ14世です。
誰よりも上に立ち、自分の存在そのものが秩序であるような絶対王者。その豪華さをバロック的な宮廷音楽で表現しながら、そこへ現代的な超絶技巧をぶつけたいと考えました。
そこで入れたかったのが、パガニーニのような超絶技巧をベースでやるという発想です。
ヴァイオリンではなく、ベース。
しかも脇役として支えるベースではなく、誰も追いつけない技巧そのものを見せつける楽器として前へ出す。
優雅な宮廷音楽の中で、突然ベースが主役になる。
演奏そのものが、他者を圧倒する権力になる。
その音楽を背負わせる人物として生まれたのが、Rexです。
Rexは傲慢という性格から作ったというより、絶対王政と超絶技巧を一人に集めた結果、生まれたキャラクターでした。

Rexは誰かと並ぶための人物ではなかった
V2のRexには、他者との関係をあまり必要としていませんでした。
王は上にいる。
周囲はその秩序に従う。
誰かと対等に並ぶ必要もないし、理解してもらう必要もない。
それで完成している人物でした。
だからV2.5でRexに他者を入れるとき、単純に友人を作るとか、誰かに心を開かせるという形にはしたくありませんでした。
それをやると、Rexではなくなってしまいます。
V2.5――完璧な秩序に、ひとつだけ例外が入る
V2.5で作った曲が、『Une Exception ~通す価値~』です。
サウンドは185 BPMのJ-Rockを軸に、シンフォニックやパワーメタルの要素を加えています。高速のギター、ダブルキック、オーケストラ、そして目立つヴァイオリンが走り続ける、かなり華やかで速い曲です。
ただし、物語そのものは大事件ではありません。
王宮へ配送の仕事で出入りする人間がいた。
それが、嫉妬を担当するLeviです。
Leviの側には、Rexに近づこうという意図はありません。
王に認められたいわけでも、対等になりたいわけでもない。
仕事として王宮に入り、仕事として通り過ぎていくだけです。
ところが、Rexの側にだけ何かが残ります。
消えるはずの微かな音が
なぜか玉座まで届いている
本来なら、王の秩序の中では重要でも何でもない存在です。
それなのに消えない。
そこでRexが出した結論が、
通す価値がある
それが結論だ
対等だと認めたわけではない
私が選んだ
それで充分だ
です。
ここが、いかにもRexです。
Leviを特別な相手として選んだわけではありません。ただ、排除する必要のない例外として通すことにした。

他者を受け入れても、Rexは謙虚にならない
普通なら、ここで人間らしくなったとか、心を開いたと書きたくなります。
でもRexの場合は少し違います。
他者を受け入れたこと自体を、自分が変わった結果だとは認識していません。
自分の秩序の中へ例外が入ったのなら、その例外を含めた状態こそが新しい秩序だと考えます。
王が置いた瑕疵ならば
瑕疵さえ様式となる
この一節に、それがかなりよく出ています。
完璧な秩序の中に、本来なら瑕疵になるものが入った。
でも、自分が残すと決めたのなら、それは欠陥ではない。
王が許した例外なら、例外まで王の様式になる。
かなり勝手です。
でも、それでこそRexだと思います。
LeviはRexを意識していない
この関係で面白いのは、Levi側との温度差です。
Rexの中では、Leviは完璧な秩序の中に残った例外です。
一方のLeviは、そこまでRexを意識していません。
王宮へ配送に来た。
それだけです。
つまり、Rexの側だけで勝手に話が進んでいます。
RexはLeviを友人にしたわけでも、仲間にしたわけでもありません。
それでも最後には、
門を閉ざすな
次も通せ
と言います。
歓迎というほどではない。
親しくなりたいとも言っていない。
ただ、次も入れてよい。
絶対王者なりの、かなり回りくどい他者への干渉です。
実は、最初はBeelを置きたかった
制作側では、Rexの相手役として最初からLeviを考えていたわけではありません。
本当は、大食を担当するBeelを置きたい気持ちがありました。
ただ、V2.5ではBeelだけを特殊な単独枠として扱うことにしました。
そのため、Rexの領域へ入ってくる人物として最終的にLeviを使いました。
結果的には、この少し噛み合っていない関係がRexには合っていたと思います。
Leviは王を攻略しようとしていない。
RexもLeviと仲良くなろうとしていない。
それでも、一方の中にだけ相手の存在が残った。
意図して強い関係を作るより、こちらの方がRexの不器用な他者干渉として面白くなりました。
3回作って分かった――傲慢は、謙虚になることでしか変化できないわけではない
同じ傲慢を3回作ると、その中心はこう変わりました。
| 段階 | 傲慢の中心 |
|---|---|
| V1 | 完璧な理論で神へ挑み、最後は崩壊する天才 |
| V2 | 絶対王政と超絶技巧を体現する、誰も並べない王 |
| V2.5 | 他者を例外として通し、その例外さえ自分の秩序へ組み込む王 |
最初は、傲慢な人物が変化するなら、少し謙虚になるしかないように思えます。
でもRexを作っていて、それだけではないと感じました。
傲慢なままでも、他人を見ることはできます。
傲慢なままでも、例外を認めることはできます。
ただしRexの場合、その変化すら自分の権限として処理します。
他者を受け入れるために人格の核を壊す必要はない。
むしろ、その人物ならどういう理屈で他者を受け入れるのかを考える方が、キャラクターらしさは残ります。
V2.5でやりたかったのは、Rexをいい人にすることではありませんでした。
絶対王者のまま、ほんの少しだけ世界の外側へ手を伸ばさせることでした。
ORIGINAL SIN / INTERACTIVE
あなたの中で「傲慢」はどれくらい混ざっている?
Rexの「傲慢」は、声を荒げて他人を押さえつけることではありません。
自分こそが基準であり、自分の判断が世界の秩序になることを疑わない、静かな確信です。
では、あなた自身が何かを選ぶとき、心ではどの罪が強く動き、
行動を整えたあとには、どの罪が混ざっているでしょうか。
12の選択から、傲慢・嫉妬・憤怒・大食・強欲・色欲・怠惰・虚栄の8つを、
「心の配合」と「行動の配合」に分けて読み解きます。
まとめ――Rexは変わった。でも本人はたぶん認めない
V1の傲慢は、完璧さを信じて神へ挑み、最後には崩壊する天才でした。
V2では、ルイ14世的な絶対王政と、パガニーニを思わせる超絶技巧をベースへ移し、Rexという絶対王者が生まれました。
V2.5では、その王宮へ仕事でやってきただけのLeviが、なぜかRexの秩序から消えずに残ります。
それでもRexは、対等になったとは認めません。
心を開いたとも言いません。
ただ、
通す価値がある
と結論を出し、最後には次も通せと言います。
人間らしくなったのに、相変わらず傲慢です。
むしろ、変化さえ自分の秩序として処理できるところまで含めてRexなのだと思います。
原罪シリーズを続けて読む
前の原罪:憤怒 / Zion

次の原罪:強欲 / Monet

V2.5でRexと関わる人物:嫉妬 / Levi




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